JIN -仁-

ドラマでやっていたのは知っていたが、観たことはなかった。 

何やら医者が幕末にタイムスリップしたもののようである。 

 

原作を読んでみた。 

 

面白い! 

 

 

代紋(エンブレム)TAKE2をすぐに連想した。 

それと八百比丘尼。(火の鳥) 

 

日本人が歴史物語で好むのは戦国時代幕末だろう。 

織田信長坂本竜馬と言ってもいいかもしれない。 

 

その坂本竜馬がキーとなる人物である。 

 

 

しかも医療マンガでもある。 

 

大好物だ。 

 

タイムスリップ+幕末+医療マンガという図式となる。 

 

 

タイムスリップとなるとタイムパラドックスの問題が出るため、思いきったことはできないのが相場である。 

が、本作ではペニシリンを実際に発見される60年以上前に作り、外国にも紹介している。 

 

これは大変なことだ。 

 

物語内では死ぬはずの人が助かるということにしか触れていないが、逆に死なないはずの人が死ぬことも意味している。 

なぜか。 

 

ペニシリンは人類が手にした初めての抗生物質(アンチバイオティクス)である。 

これが物凄く効いた。 

 

普段薬を使わない、ジャングルの奥地の未開の人たちは薬が良く効くそうだ。 

仁丹すら万能薬でかなり効くのだというのを読んだことがある。 

ましてペニシリンだ。 

効いて当然だろう。 

 

幕末ならばなおのこと効いたに違いない。 

最初は・・・ 

 

すぐにこれに対抗する耐性菌が出てくる。 

抗生剤と耐性菌のいたちごっこの始まりである。 

 

ペニシリンが本格的に使われ出したのは戦前から戦中で、日本でも戦中に碧素(へきそ)として独自に抽出(少量しか作れなかったらしいが)している。 

それでもいたちごっこなのだ。 

 

幕末にペニシリンが作られたとして、その後は耐性菌が生まれ効かなくなっていく。 

その次の抗生物質の発見が遅れる(実際の発見と同じ頃)なら、本来はペニシリンで助かった、例えばチャーチルが助からなかったかもしれない。 

彼だけでなく、多くの人が、本来はペニシリンで助かったものが助からないかもしれないのだ。 

 

とはいえ、それを言い出すときりがないのだが。 

 

 

ラストも悪くない。 

代紋TAKE2の最悪さに比べたらかなり良いとも思える。 

 

 

それでも気になった点がある。 

 

銭湯の男湯と女湯が別になっているのはちょっとおかしい。 

 

江戸時代は混浴が主流で混浴禁止が出されることもあった。 

混浴禁止であっても与力・同心は女湯に入ったが、これは女性客のいない朝風呂に入り、男湯での会話を聞いて捜査の手がかりとしていたためだという。 

禁止されてもしばらくするとまた混浴に戻る。 

黒船(軍艦)でやってきたペリーが混浴にびっくりしたという話もあり、その後混浴が禁止されたのだが、それは明治の新政府によってである。 

 

幕末は混浴だったのだ。 

 

 

言葉についてだが、これもある程度は仕方ないことで、竜馬が「KY」(空気が読めない)を使ってもマンガだから許される。 

安道名津(あんどうなつ)、富醂(ぷりん)、佐舞麗(さぶれい)も問題ない。 

後世の言語学者は頭を抱えるかもしれないが。 

 

餡洞納餅のように意味から名付けたようにした方が良かっただろう。 

安藤奈津でも良かったのだが、そうする「あんどーなつ-江戸和菓子職人物語-」の主人公の名前が変わっていたかもしれない。 

当て字は元の言葉を知らないと文字の意味で受け取るため、醂はアルコールのことだから強い味醂のように思うのだ。(味醂は飲み物だった) 

まあ、ちょっと味醂を加えると誰もが納得してくれるかもしれない。 

 

一番気になったのは「」と「」の逆転だった。 

 

大金を出しておいて「銭が無駄になる」というセリフがあった。 

「江戸っ子は宵越しの金は持たない」というセリフもあった。 

これは逆だ。 

 

銭金というのは、銭というお金と、金というお金のことだ。 

今でも小銭大金と言う。 

小金・大銭とは言わない。 

今の感覚で言えば、硬貨と紙幣とすると分かりやすいだろう。 

 

宵越しの小銭、つまり1文銭(4文銭が出たのは明治5年)は持たないのであって、宵越しのお金を持たないのではない。 

それでは無一文だ。 

 

金や銀の通貨は金である。 

銭も百文さし(96文)となると結構な額になる。 

これは百文分の両替で、手数料を4文取って96文を紐を通したものである。 

なぜ96文かというと、2・3・4・6・8で割り切れるという便利さがあったためらしい。 

江戸時代(明治初期も)、4の倍数(あるいは4分の1)がよく使われたからだろう。 

前述の4文銭も明治に入ってとはいえ必要から作られたもので、これができたばかりにそれまで団子は5つ挿していたものが4つにしてワンコインとなったのである。 

 

このバラになった何枚(数十枚かもしれない)かの銭は持たないということだ。 

 

だから、銭と金を逆にすると意味が通じない。 

 

また、西郷隆盛の虫垂炎手術で、ダグラス窩と言っている。 

本来ダグラス窩は直腸子宮窩のことで女性にしかなく、でっかい陰嚢(陰嚢水腫でだが)の西郷さんは(推定)男性だから膀胱直腸窩である。(ついでに肝臓と右腎臓の間はモリソン窩だ、覚えておこう) 

これは現代の医師でも男性にダグラス窩と言う人もいるそうだから、脳外科が専門ならそれでも仕方ないかもしれない。 

 

 

なぜ竜馬の意識が仁に宿ったかとかタイムスリップしたかなどは問題ではない。 

魔法と同じで、それを言い出してはならないのだ。 

 

仁がタイムスリップしたのは文久二年で、翌年に前述のペニシリンを作っている。 

文久三年のことである。 

「だから何?」という人は健全だ。 

文久三年で笑える人は「小林製薬の糸ようじ」でも笑える人だから。 

 

 

マンガ原作のドラマで面白かったことがない。 

テレビで流れている予告を見ただけで、違うと感じる。 

 

橘咲(16歳)が綾瀬 はるか(2009年のドラマ時に24歳)というのでは年齢が違い過ぎると思った。 

が、よく考えると、今の年齢ではそれくらいかもしれない。 

 

娘十八、バンチャもデバナ」という。 

これを出花だと思っている人が多い(広辞苑すら)が、それでは意味が通じない。 

出先・出端ではなかろうか。 

はなっからしょっぱななどのはなで、最初という意味だ。 

新茶が採れ、普通のお茶が採れ、晩茶(番茶)が採れる。 

結婚適齢期の終わりの方の始まりということだろう。 

だから「娘十八、晩茶も出先」となる。 

 

そう考えると、幕末の16歳が今の24歳でもおかしくない。 

 

幕末の偉人などはみんな若い。 

医療が未発達で、寿命が短かったのだ。 

吉原の遊女の平均寿命は21歳だったそうである。 

 

 

ともあれ、原作は完結した作品なので一気に読める。 

かなりお勧めだ。 


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