映画「アバター」のこと 3

ふと思って調べると、「アバター」は日本語吹き替えが多いようだ。 

3Dで字幕だと読むのも大変だし、折角の映像をじっくり観れないからだろう。 

が、日本語吹き替えがどういう内容か分からない。 

今回のテーマは「I see you」だが、重要な台詞だけにググるとあるものである。 

「あなたが見える」と訳していたらしい。 

まあ仕方ないだろう。 

 

 

映画に何度も出てくるキーワードであり、エンディングテーマのタイトルにもなっている。 

ジェイクとネイティリが会ったときの挨拶が「I see you」である。 

 

「See you」だけでは別れの挨拶だが、主語に自分を置くことで意味を逆転させている。 

この「see」は意味の多い単語だ。 

 

「みる」だが日本語でも、「見る」「観る」「診る」「看る」「視る」などがある。 

漢字が違うといわれそうだが、元は同じことば「みる」に意味から漢字を当てたのだろう。 

身近な単語は、短く、古くから使われているため、意味も多くなる。 

日本では「あ」が自分のことで「な」が相手のことだと魏志倭人伝に書いてあるように、最初の言葉は短かったはずだし、身近なものから作られていったはずなのだ。 

これは言語の種類によらず普遍的だと思う。 

 

seeと似た意味にlookとwatchがある。 

Bookshelfから引用(抜粋)してみよう。 

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look は視線を対象の方へ向ける行為である。 

watch は時間をかけて、動いている対象や変化が期待される対象を「見ている」の意である。 

see は視覚上の認知を意味して、対象が「見える」こと、さらに「目に見える」だけでなく「心でわかる」の意味でよく用いられる。 

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何となく、分かってきただろうか。 

 

総合病院などに重傷(重症)患者を看護するための「ICU」がある。 

集中治療室 (Intensive Care Unit)である。 

「I see you」と掛けたとしか思えないネーミングだ。 

 

 

ラストでの「I see you」は、その前までの挨拶とは違うように思う。 

もし、英語を知らない人に教えるなら、いや英語でなくても、挨拶は基本である。 

なぜ一般的な挨拶(Halloなど)ではなく、「I see you」なのだろうか。 

素直に考えると、ナヴィ語の挨拶を直訳したのではないかと思える。 

見えるのかもしれないし、感じるのかもしれない。 

 

しかしそれでも、単なる挨拶でしかないはずだ。 

英語でも日本語でも、おそらくナヴィ語でも同じで、挨拶は究極の慣用句であり、元の意味は忘れ去られ、言葉として交わされるだけになる。 

「Good by(Good bye)」は「God be with you (till we meet again)」だが、そんなこと思って言っている人はいない。(Godはイエス・キリストと解釈しても良い) 

「Bye bye」なんて離れすぎているだろう。 

まあ、これを知らないと「The Force be with you」が分からないことになる。 

 

「おはよう」は遅刻などすると「おそよう」などと言われるが、実際に早い時間だからと意識して使っていることはほとんどないだろう。 

「さようなら」は「左様ならば」で、「しからば」「さらば(されば、さにあらば)」も同じようなものだし、「では」や「じゃ」なども同じ意味合いだ。 

しかし、誰もその後に続くべき言葉を要求しない。 

「これにてご免」「失敬する」「また会う日まで」まで言う方が奇妙だろう。 

それくらい究極の慣用句なのである。 

 

seeに「会う」という意味もある。 

「See you again」の使い方だが、「私、会った、あなた」かもしれない。 

とにかく、この場合は慣用句としての挨拶と考えておきたい。 

後のお楽しみのために、である。 

 

 

ラストシーン。 

倒れているジェイクを見つけたネイティリは「My Jake」と言って駆け寄る。 

初めて見る実体のジェイクだがすぐに分かった。 

ネイティリがマスクをしてやり、助け起こす。 

ジェイクはネイティリの頬に手を置きネイティリも手を重ねる。 

ジェイクは「I see you」と言い、それに答えてネイティリも「I see you」と言う。 

 

今までしてきた挨拶である。 

だが、それだけではない。 

このseeは、アバターではなく実体でネイティリを見て触れ、ネイティリも実体であるジェイクを初めて見て触れたという意味が込められているのである。 

単なる挨拶だったはずの言葉に別の意味を込めたのだ。 

 

もうひとつ、相手が見える心で感じるという他に、アバターという表面を見るのではなく、その奥にいる実体を見ているという意味も込められているのではないだろうか。 

見た目ではなく、心を、である。 

 

 

ジェイクはその後、もうひとつの決断をする。 

ひとつ目の決断はパンドラに行くこと、ふたつ目はナヴィに見方し仲間だった者たちと戦う決心である。 

最後の決断はアバターとして生きていくというものだった。 

アバターへの転送儀式で、ネイティリは元のジェイクにもちゃんと別れを告げている。 

全てを認めているということだろう。 

アバターを通して、ジェイクを見ていた、見ることができたからだと思う。 

ネイティリがアバターであるジェイクに向かうと・・・目が開き、ブラックアウト。 

エンディングの「I see you」となる。 

 

 

ひとつの言葉を上手く使っていると思う。 

 

 

アメリカの公式サイトの方が情報が多かったのでURLを書き留めておく。 

http://www.avatarmovie.com/index.html 

 

ついでに日本の方も。 

http://movies.foxjapan.com/avatar/ 


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