映画「アバター」のこと 4

科学的検証をしてみよう。 

 

普段は作品の世界観を重んじ、「そうなんだから、仕方がない」というのが私の主義である。 

監督という神が創った世界なのだから、何があっても認めるしかないのだ。 

たまたま、ある星に地球とさほど変わらない生物がいて、DNA合成ができるほどであってもである。 

何でも認めて、どっぷりとその世界観に浸った方が楽しめるからだ。 

 

しかし、物理的に妙なところは気になるものである。 

名探偵コナンがいい例だ。 

子供になってしまう薬(アポトキシン)、麻酔針(針が溶けないと危険)、声を変える蝶ネクタイ(初めて会った人の声も出せる)など、これらを否定したら面白くない。 

しかし、事件解決は物理的・論理的事実によるもので、犯人が子供になったり大人になったりはしないのだ。 

両方あって然るべしなのである。 

 

 

ジェイクのアバターが眠ると、実体のジェイクは起き、食事を摂るシーンがある。 

どのくらいの間隔でどのくらい眠るのか分からないが、強制的に食べさせられる様子から、意外と短い間隔なのかもしれない。 

 

パンドラは木星型惑星の衛星なので、現実の木星を見てみよう。 

ガリレオ衛星の一番内側にあるイオは同じ面を木星に向けている。 

イオばかりでなく、全てのガリレオ衛星が同じ面を木星に向けているのである。 

つまり自転・公転周期は同ということになる。 

イオが1回転にかかる時間は約1.8日ほどである。 

2番目のエウロパは約3.5日、3番目のガニメデは約7.1日、4番目のカリストは約16.7日で1回転する。 

 

強力な引力によって、大きな衛星は同じ面を向ける。 

月がそうであるように、だ。 

およそ28日(地球の公転もあるため見た目では29日ほどかかる)で1回転している。 

また、逆に地球も月によって地軸の傾きが修正されている。 

もし月がなければ、傾きが更に大きくなり、地軸が倒れてしまうと考えられているのである。 

 

パンドラは昼と夜があり、夜に眠るようである。 

昼があまり長いと大変だ。 

実体であるジェイクは食事もしなければならないし、眠らないといけない。 

睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、どちらも必要である。 

リンク時、体はほぼ動かない(目は動き、レム睡眠のように見える)ので体の休息は不要としても、脳はずっと動いているのだ。 

長時間脳が休まないでいられることはない。 

ノンレム睡眠という深い眠りがないと眠ったことにならないのだ。 

不眠が続くと、マイクロスリープというのが襲ってくる。 

本人は起きているつもりだが、一瞬意識が飛ぶ現象が起こるようになるため、車の運転中などは特に危険である。 

いくらSFであっても、人間なんだから食事や睡眠は必要だろう。 

 

問題は、パンドラより内側に衛星がいくつかある(少なくとも3つ見える)映像があるということである。 

4番目以降の衛星で、それほど長くない自転・公転期間を持つことは難しい。 

最初に書いた、「意外と短いかもしれない」ということはありえないのだ。 

逆に(地球時間で)数日間昼が続いても大変だ。 

飲まず食わずで睡眠もせずアバターとして活動していられるはずがないのである。 

 

パンドラは惑星ではなく衛星である。 

前述のように、衛星は同一面を惑星に向けているはずである。 

日中に主惑星が見えているシーン(バンシーを捕まえに行くところ)がある。 

惑星が見える側にいるということだ。 

 

ところが真昼に惑星の影に入るシーンはひとつもない。 

地球と月では影が小さいため月食はめずらしいが、巨大惑星では毎回転ごとに食になるはずである。 

地球的には珍しいことだから、誰でも映像で紹介したくなるはずだが、それがないのだ。 

月食と同じく、恒星と主惑星と衛星が一直線となるのだから、最も恒星の高度が高い真昼に起きるため、初めて体験するとかなり驚くはずなのにである。 

 

パンドラは公転と自転周期が違い、やはり1日が短くないと)説明がつかない。 

木星と衛星の関係とはかなり違うが、仕方ないだろう。 

 

 

アルファ・ケンタウリは3重連星でA星・B星が最も近づいたときで11天文単位(太陽と地球の距離の11倍)で、C星はこれらから0.2光年も離れている。 

A星の質量は太陽の約1.1倍、B星は約0.9倍であり、C星は0.4倍程度である。 

太陽系の木星は太陽から5.2天文単位の距離、つまりこの連星でいえば真ん中くらいにある。 

しかし気温的に地球と同じ程度である必要があるため、木星ほど離れるとなかなか厳しい。 

設定でのパンドラはA星の惑星ポリフェマスの衛星とされている。 

ポリフェマスの内側に惑星がいくつもある。 

あまりA星から離れると、B星の影響によって確実に軌道は乱される。 

この星系では、生命が進化できるほど惑星・衛星が安定でいるのは難しいだろう。 

まあ、これもそうなんだから仕方がないとするしかない。 

 

なお、どうやって他の恒星系まで飛行するかは問題ではない。 

それを否定すると、SFが成り立たなくなるからである。 

現時点ではワープ航法は完全に否定されているが、他の航法が実用化されるかもしれない。 

100年前、人類が宇宙に出るとか月に降り立つなどSF小説かおとぎ話だった。 

そういうものである。  

ちなみに、恒星間航法も問題だが、銀河放射線からどうやって身を守るかも大問題である。 

 

これらが解決したとしても、凄いと思うのは、4.4光年も離れた星系の一衛星に常温超伝導物質を発見できたことである。 

他にはないというのだから、全部の惑星や衛星を調べたのだろう。 

どうやって見つけたのだろうか。 

地球から無人探査機を飛ばすにしても、恒星間航行になるのだから、莫大な費用がかかるのに、だ。 

これは大きな謎である。 

 

 

重力はどうだろうか。 

巨大生物が多くナヴィも身長3メートルあり、特に植物は巨大である。 

 

重力と大気圧は比例関係にあると考えてよいが、金星と火星のように極端である必要はない。 

ある程度小さくても大気は確保できるのである。 

パンドラに大気があるのは問題ない。 

大気圧は、地球に比べそれほど変わらないのではないだろうか。 

一番分かりやすいのは、大佐が逃げるジェイクたちを銃で撃つために外に出るシーンである。 

普通にドアを開けて、すぐに外に出ている。 

そうでなくても、気圧調整室や気密ハッチのようなものではなく、普通にドアで出入りするシーンばかりなのだ。 

これは外部と建物内部の気圧がほぼ同じことを意味しているが、常時低かったり高かったりする大気にいると体に影響がでてくる。 

その場合は、内部を減圧したり加圧して、1気圧程度に保とうとするはずだ。 

台風など低い気圧になるだけでも、古傷が痛むという人がいる。 

ほんの0.9気圧になっただけで、である。 

パンドラには傷痍軍人もいるし、科学者や企業のお偉いさんはそれほどタフではないだろう。 

従ってパンドラは極めて1気圧に近いと考えられる。 

 

重力は植物の大きさからして、弱いと考えるしかない。 

触ると引っ込む花は柔らかそうだが、あの大きさで広がる。 

高高度から落下して大丈夫なのも、バンシーを捕まえて乗って飛べるのもそうだ。 

地球の重力(1G)では、鳥が飛べるのは体重が13kgまでで、それ以上の重量になると飛べない鳥になるのである。 

 

そうなると、飛行する機械、ヘリみたいなのやガンシップなどに問題が起きる。 

気圧は同じだが重力が違うということは、地球仕様だとコントロールが難しいはずだ。 

パンドラ仕様に調整してあるのだろうか。 

 

クラゲのような、あるいはたんぽぽの種のようなものが出てくる。(ヴィトラヤ・ラムノングの種) 

ああいったシーンで思うのは、海の中のようだ、ということである。 

深海に住む生物は大抵発光するという点も、パンドラの様子と合致する。 

タイタニック以来、キャメロン監督は海に傾倒しているのだ。 

現実の沈んだタイタニックを撮影した記録映画や、海の生物の記録映画などを作っている。 

実際、タイタニックからアバターの間は海に関する仕事しかしていない。 

青い色や浮遊したり発光しているイメージは海だろう。 

海では浮力により重力を相殺できる。 

重力が弱そうな描写はこういった点から出ているのかもしれない。 

 

 

ヘリコプターのような飛行する装置のエネルギー源が分からないのだが、撃墜されると爆発するので、何らかの燃料を用いていると思われる。 

問題は爆発だ。 

 

見た目が地球上での爆発のようである。 

まあSFでは宇宙で、宇宙船だろうが惑星だろうが、地上とおなじように爆発するので、あまり取り上げても仕方ないのだが・・・ 

 

他にも、松明を燃やしたり、明かりとしての炎があったり、あるいは木が燃えたりする。 

地球と変わらないという印象しかない。 

 

ともかく、おそらくは酸素が、地球と同じ程度あるのだろうということである。 

だとすれば植物が多いにしては酸素が少ない。 

地球での石炭紀には酸素濃度が35%程度に上がっているのである。 

 

大気には毒性があるため、マスクが必要だが、酸素ボンベのようなものは見られないため、有毒成分を吸着あるいは無毒化することで呼吸ができると思われる。 

やはり、酸素は地球とあまり変わらないようである。 

 

もしそうなら、なぜ目もマスクの中になるのか分からない。 

目はたえず濡れていて毒素の影響を受けやすいとかがあるのかもしれない。 

たまねぎの切り口を手で触っても大丈夫だが、目に入るととんでもなく痛い、それだろうか。 

しかし、それならマスクなしの場合に、目を細めたり、固くつぶったりするはずである。 

その描写はないから、痛くはないようだ。 

痛くはないが、目にあまりよくない成分と考えるのが合理的かもしれない。 

多分、海のイメージで、マスクが作られているように思うが・・・ 

 

 

最後は大問題を挙げよう。 

超電導物質があり、それによって巨大な岩山が浮かぶ。 

これは、文句を言うべきところではない。 

潮汐力にも風にも影響されないが、そうなんだから仕方がないのである。 

強力な磁力によって固定されているのだろう。 

 

しかし、それを認めると、逆にあるシーンで目を疑った。 

その強い磁力の中を飛行し、あるいは戦闘するのである。 

おそらく金属製なのに、だ。 

巨大な磁界を何の問題もなく飛べるのである。 

計器には不都合が生じるが、停止する訳ではない。 

火器の自動照準などは使えないようだが、発射はできる。 

AMPスーツもそうだ。 

磁化されたり、故障するのではないだろうか。 

エンジン・モーターもそうだし、何といってもコンピュータを使っていないはずがない。 

常温超伝導物質の採掘をしようというくらいだから、常温超伝導CPUを使っている可能性が高いはずなのだ。 

磁力に影響されないのだとしか思えないが、電気を使っている部分(信号を伝える)は必ずあるはずだから、磁化されない金属だとしても導体は存在するだろうし、磁界の中を導体が移動すると電力が生まれるはずである。 

強力な磁力線の中を銃弾が真っ直ぐ(放物線は描くだろうが)飛ぶのは妙だろう。 

そうでなくても、岩山が動かないほどの磁力の中を普通に飛ぶことができるのだ。 

あるいは磁力を相殺するような装置でも作ったのだろうか。 

SFなら反重力エンジンだってありうるのだから、それなら何も問題ない。 

 

 

とはいえ、これらを考えるのは遊びであり、気にしているというのでもない。 

スタートレックもスターウォーズも、あまり細かく突き詰めてはならないのだ。 

宇宙のどこに行っても、大抵は大気がありそのまま外を歩けるし、言葉だってみんな英語が分かる。 

 

スターウォーズのタトゥイーンの恒星は連星で、ふたつが同じような大きさに見える。 

夕景などは印象的だ。 

これは非常に近いところを回る連星の重力中心に対し惑星があることを意味している。 

この場合、かなりの速度で恒星同士が回転していなければならない。 

つまり、あるときは重なり、あるいは離れたり近づいたりすることになる。 

気温も変化するだろうし、惑星が軌道を維持するのも難しいだろう。 

他にも色々あるが、スターウォーズを語るとアバターの比ではなくなるのでよしておこう。 

 

スタートレックのスポックはバルカン星人と地球人とのハーフである。 

髪型は彼の趣味だろうから、耳の形くらいしか地球人と変わらない。 

つまり遺伝子的にも近いという点で、ナヴィと地球人の関係と似ている。 

 

 

これら全て、そうなんだから仕方ない、のである。 


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